大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

札幌家庭裁判所 昭和56年(家ロ)2001号 審判 1981年1月13日

債権者

山口トヨ

債権者代理人

武田庄吉

武田英彦

債務者

山口春夫

主文

債権者が、債務者に対し有する前記債権の執行を保全するため、債務者所有の別紙物件目録記載の不動産は、これを仮に差し押える。

債務者が、前記の請求金額を供託するときは、この命令の執行停止又はその執行処分の取消を求めることができる。

理由

本件記録によれば、債権者は、昭和三年一一月五日、債務者と婚姻し、長男浩(昭和三年一一月ごろ出生、生後五〇日位で死亡)、二男次雄(昭和四年生、昭和一二、三年ころ死亡)、長女良子(昭和七年生)、三男富雄(昭和九年生)、四男和雄(昭和一五年四月二六日生)、五男隆雄(昭和一八年三月八日生)、六男末雄(昭和二〇年七月二七日生)、二女美枝子(昭和二三年一月二九日生)を儲け、長男と二男は死亡したものの、その余の子供はいずれも成長して健在であるところ、債権者は、昭和五五年一二月二七日、債務者と協議離婚をするに至つたことが認められる。

ところで、本件の疎明資料、札幌家庭裁判所調査官本間良信作成の調査報告書並びに債権者代理人両名に対する事情聴取の結果から認められる債権者と債務者双方の五〇余年の長きにわたる婚姻生活の実態、その間に維持又は形成された財産の状況、これにつき債務者の妻として果した役割(貢献の程度)、さらにその他一切の事情等(双方の婚姻が破綻するに至つた事情等)及び、債務者の所有名義であつた不動産(札幌市白石区厚別西二条一丁目四六番五、宅地323.56平方メートルほか二筆)が、離婚前の昭和五五年一一月五日に、ホーム不動産管理株式会社(札幌市北区北三八条西二丁目三一七番地二)に対し売却され、同年同月二七日の受付で、同会社に対し所有権移転の仮登記がなされている事実等を合わせ総合すれば、現段階において、本件申請を相当として、これを認めるべきものと考える。

よつて、家事審判法一五条の三、家事審判規則五六条(五二条の二を準用)を適用して主文のとおり審判する。

(野口頼夫)

請求債権目録

一、金三〇〇〇万円也

但し、昭和五五年一二月二七日札幌市白石区長受付にかかる協議離婚に伴う債権者の債務者に対する財産分与請求権。

物件目録<省略>

<参考>

(札幌家裁昭五六(家ロ)第二〇〇二号審判前の保全処分(債権仮差押)申請事件、〔本案、昭五六(家)第一号財産分与審判事件〕昭56.1.26審判)

仮差押命令

当事者の表示  別紙当事者目録記載のとおり

請求債権の表示 別紙請求債権目録記載のとおり

上記当事者間の昭和五六年(家ロ)第二〇〇二号審判前の保全処分(債権仮差押)申請事件について、当裁判所は、債権者に保証として、金五〇万円(札幌法務局供託番号昭和五五年度金第一八三四三号)を供託させたうえ、次のとおり審判する。

主文

債権者が、債務者に対して有する前記債権の執行を保全するため、債務者の第三債務者に対する別紙差押債権目録記載の債権は、これを仮りに差し押える。

第三債務者は、債務者に対し、差押えにかかる債務の支払をしてはならない。

債務者が、前紀の請求金額を供託するときは、この命令の執行の停止又はその執行処分の取消を求めることができる。

理由

1 本件の疎明資料によれば、債権者は、昭和三年一一月五日、債務者と婚姻したが、昭和五五年一二月二七日協議離婚をするに至つたことが認められる。

2 ところで、本件記録、札幌家庭裁判所調査官本間良信作成の調査報告書(当庁昭和五六年(家ロ)第二〇〇一号審判前の保全処分事件記録に編綴)、並びに、債権者代理人弁護士武田英彦に対する事情聴取の結果によつて認められる債権者と債務者双方の長期間にわたる婚姻生活の実態、その間において維持又は形成された財産の状況、これにつき債務者の妻として果した役割(貢献の程度)、その他一切の事情、かつ、前掲各資料によれば、別紙差押債権目録に記載する債務者の所有名義であつた不動産は、昭和五六年一月一〇日の売買を原因として、いずれも第三債務者に対し、各所有権移転の仮登記がなされており、さらに債務者の所有名義であつた不動産三筆(札幌市白石区厚別西二条一丁目四六番五の宅地ほか二筆)については、昭和五五年一一月五日の売買を原因として、申請外ホーム不動産管理株式会社に対し、各所有権移転の仮登記がなされている事実が認められること等を合わせ考慮すれば、本件申請を相当として、これを認容すべきものと判断する。

3 よつて、家事審判法一五条の三(民事訴訟法七四一条、七四三条)、家事審判規則五六条(五二条の二)を各適用して、主文のとおり審判する。 (野口頼夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例